まずは血液検査にて、インスリン分泌能、1型糖尿病特有の抗体出現の有無を調べて、1型糖尿病、2型糖尿病を鑑別します。日本人の場合、90%は2型糖尿病であり、1型糖尿病は5%程度であります。
2型糖尿病の治療に関しては、アメリカ糖尿病学会(ADA)やヨーロッパ糖尿病学会(EASD)では、治療ガイドラインを発表していますが、日本糖尿病学会(JDS)では、発表していません。
欧米人と日本人では体格やインスリン分泌能が異なるため、ADAやEASDの治療ガイドラインをそのまま日本人に用いることは適さないため、患者様個人の体質を考慮して最適な治療法を検討していきます。
糖尿病の病型にかかわらず糖尿病治療で一番大切な点は、「外因性および内因性のインスリン量をなるべく少量にしての、最良の血糖管理です。」血糖値を改善できても高インスリン血症を改善できなければ、動脈硬化やある種のがんの危険因子となります。
当診療所では、インスリンを使用しなければならない患者様に対してはなるべく少量のインスリンでの管理を、経口薬での管理を必要とする患者様に対しては、血糖管理はもとより内因性のインスリン量を少なくするような経口薬をお勧めしていきます。
また、2型糖尿病患者様にとって、食事療法、運動療法はとても大切になっていきます。
合併症や糖尿病病期を考慮した、食事、運動指導をしていきます。
病態がインスリン抵抗性メインなのか、インスリン分泌不全がメインなのか調べます。
減量を試みて内臓脂肪を減らします。内臓脂肪は、TNFαやIL-6、アンジオテンシノーゲンなどの悪玉サイトカインを分泌します。
悪玉サイトカインは、血糖値や血圧を上昇させます(インスリン抵抗性増大)。減量をするとまずは人体にとって不要な部分つまりは内臓脂肪が減少します。内臓脂肪が減少すると悪玉サイトカインの分泌が抑えられるため、血糖値や血圧が低下します。
インスリン抵抗性メインの糖尿病の場合は、1にも2にも肥満を解消することが根本的治療になるわけです。肥満の解消のためには何よりも生活習慣(食事・運動)の改善が大切です。当院では、皆さまのライフスタイルを考慮した生活習慣の改善を提案して肥満の解消に努めていきます。
生活習慣の改善に努めても血糖値が改善しない場合には、薬物療法を併用していきます。
糖尿病治療には様々な作用機序の薬物がありますが、ここで気をつけなければならないことは、”体重増加をきたす糖尿病薬”、”体重減少をきたす糖尿病薬”があるということです。
誤った糖尿病薬治療をしていますと、糖尿病治療薬を開始した最初の頃はHbA1cが低下して良かったのですが、そのうち体重が増加し始めて(インスリン抵抗性が増大して)、またHbA1cが高値になってしまうという症例が時々散見されます。
インスリン抵抗性糖尿病の場合は、減量に主眼を置かねばならないので、当院では”体重減少をきたす糖尿病薬”を併用していきます。
具体的には、メトホルミン、SGLT2阻害薬、GLP-1アナログなどです。
特に、メトホルミンには悪性腫瘍の発症を有意に抑えるといった報告(Diabetes Care 2009;32(9):1620-5)もされております。当院では、メトホルミンを中心とした治療を提案しています。
生活習慣の改善も大切なのですが、薬物療法の占める割合が大きくなります。
インスリン分泌不全を補うため、インスリン分泌促進薬(DPP4阻害薬、グリニド薬、SU薬)などを利用します。
ここで気をつけなければならないことは、インスリン分泌促進薬の内服薬により本人は気が付いていないだけで低血糖をきたしている患者様が非常に多くいらっしっているという点です。
「昼食前や夕食前になると目がぐるぐる回る」「昼食前や夕食前になると異常な空腹感を感じる」「朝起きると時々、じんわりと汗をかいている」と、いった症状があるかたは低血糖が起きている可能性があります。
低血糖は高齢者の場合は特に致死的な不整脈を起こす場合があります。
インスリン分泌促進薬を使用する場合は、低血糖が起きていないか十分に配慮しながら使用していく必要があります。
絶対的なインスリン分泌不全が原因です。
生理的にインスリンを補う事が大切となります。
生理的にインスリンを補うために、インスリン頻回注射療法やインスリンポンプ療法の加療を推進していきます。
1型糖尿病の食事療法は、学会では食品交換表をもとにした指導を推奨していますが、食品交換表をもとにした食事療法ではうまくいかない患者様も多いです。
そのような方には、欧米で普及しているカーボカウントを指導していきます。
1型糖尿病でインスリン治療をしている方のなかには、1型糖尿病特有の抗体が陽性であるだけで、インスリン分泌能が保たれているかたもいらっしゃいます。そのような方には、インスリン離脱療法を提案しています。
糖尿病の管理目標は、HbA1c(NGSP値)7%未満を目標とします(妊婦はさらに厳格なコントロールとなります)。
HbA1c 7%未満に管理していると、糖尿病関連合併症が発症しないからです。
しかし、HbA1c7%未満の管理ですと、治療法によっては低血糖が生じます。
高齢者にとって低血糖は、一番避けなければならない有害事象です。
高齢者糖尿病の場合は、残りの余命を考慮し、それに見合った血糖管理を行います。
胎児は低血糖には強いのですが、高血糖には大変弱いです。
そのため、産科医と連携をとりながら厳密な血糖管理を実施していきます。
1型糖尿病のかたは来るべき妊娠に備えて、妊娠前のインスリンポンプ治療をお勧めします。